2013年03月15日(金)締切 大阪大学大学院・生命機能研究科教授の募集について
第85回生命機能研究科研究交流会 2013年 1月10日(木) 16時00分~18時00分|特別講演:長山雅晴教授(北海道大学)/傳田光洋主幹研究員(JST CREST & 資生堂リサーチセンター)
2013年最初のコロキウムでは、「皮膚科学」をテーマにユニークな研究を展開されているお二人の先生をお招きし、講演をおこなって頂きました。
講演の前半では、資生堂の傳田光洋先生に皮膚におけるバリア形成と情報処理についての実験的なお話をして頂きました。
皮膚には体液の流出や外敵の侵入を防ぐ役割がありますが、これはバリア機能と呼ばれています。傳田先生は研究の過程で、角層の直下にCa++が局在していることを発見し、その分布状態がバリアの恒常性に重要であることを突き止められました。さらに、皮膚のバリアが壊れた時の細胞応答を調べるため、ケラチノサイトの培養系を利用していました。ケラチノサイトを単層培養して、一部分を空気に曝すことで、バリアの破壊を行い、その時の細胞内Ca++濃度の動態を観察します。その結果、傷ついた細胞の周辺からCa++の波が発生して組織全体に広がってゆく様子が観察されました。またそればかりか、一方向に進んでいたCa++波が逆転したり、弧を描くように進んだりと、とても不思議な現象を紹介されていました。傳田先生は上記二つに関しては、観察例が少なくまだまだ検証が必要であるとおっしゃっていましたが、身近な存在である皮膚に何か重要な原理が隠されている・・・そのような印象を筆者は強く感じました。
皮膚はバリアとしての役割がある一方で、外部刺激を認識するための受容器でもあります。後半では、温度受容タンパク質としても知られるTRPチャネル群と皮膚機能の関係性についてお話されました。TRPチャネルは温度や化学物質の受容に関わる神経細胞だけでなく、ケラチノサイトにも発現しています。ケラチノサイトと神経線維の共培養の実験はとても興味深いもので、ケラチノサイトを興奮させるとすぐ近くの神経も興奮し、そのシグナルは伝達されるのです。この現象は、①TRPチャネルの活性化、②ケラチノサイトからのATPの放出、③ATPによる神経細胞の興奮、という一連の反応によって説明されます。これらの結果から、皮膚における感覚受容の最初の入力場所は、神経ではなく、皮膚そのものではないか?という、大胆な仮説を提案されていました。
講演の後半は、北海道大学の長山雅晴先生に皮膚バリア恒常性の数理モデルについてお話をして頂きました。
バリアを構成するケラチノサイトは表皮の深い位置で生まれ、その後上層に移動してゆきます。そして細胞は死んだ状態で積層して角層となり、最終的には垢として剥がれます。このように表皮は静的な構造体ではなく、細胞の動的な振る舞いによって維持される複雑なシステムであることが分かります。長山先生の講演では、いかにして現象の本質を理解するか、そのための道具が数理モデルであることを強調されておりました。モデルの構築のために、まずは実験で得られたさまざまなパラメーターを組み込んだモデルをつくるそうです。そして、現象の再現に必須なものとそうでないものを取捨選択しながら、本質に迫ったモデルを目指します。興味深いことに、出来上がったモデルのパラメーターを調節している過程で、角層が肥大し表皮にめり込んだ状態-いわゆる魚の目が生み出されました。このように現実の病気が再現できることから、このモデルの妥当性がうかがわれます。将来、この"皮膚シミュレーター"によって皮膚疾患のメカニズムの解明やその治療法の開発が期待されます。
2013年02月08日(金)締切 非常勤職員の公募
2013年02月18日(月) ダイナミックブレインネットワーク研究室〈北澤茂教授〉web更新しました。
2013年2月15日(金)掲載 平成25年度(2013年度)3年次編入学合格者受験番号一覧
2013年03月05日(火)締切 「脳情報通信融合研究センター(CiNet)スプリングスクール2013 -- 脳情報を情報通信に活かす」(参加者募集中)
炎症誘導機構【炎症アンプ】は様々な病気に関連していた! - メタボリック症候群など慢性炎症性疾患の新規治療法開発へ -
図1.炎症アンプは非免疫系細胞の炎症誘導機構である
血管内皮細胞や線維芽細胞といった非免疫系細胞が、IL-6とIL-17などの転写因子STAT3およびNF-kBを同時活性化させるような因子によって刺激を受けると、それぞれの単独刺激と比較して大量のIL-6やケモカインといった炎症性因子が発現誘導される(赤色の棒グラフ)。放出されたIL-6は自身の細胞に作用するという増幅ループ(炎症アンプ)が形成され、これが自己免疫疾患モデル(F759関節炎や多発性硬化症モデル:EAE)の発症に深く関与する。
図2.炎症アンプはヒトのさまざまな疾患に関連する
全遺伝子を対象とした3種のスクリーニングの結果をヒト疾患関連遺伝子データベースの情報と照合し、それぞれの遺伝子リストに含まれる疾患関連遺伝子の数を疾患の種類ごとに円グラフで表示したもの。自己免疫疾患に関する遺伝子(赤色の部分)以外にもメタボリック症候群(青色)や神経変性疾患(緑色)、さらに、アトピー、アレルギーを含むその他の炎症性疾患(水色)などさまざまなヒトの病気に関与する遺伝子が炎症アンプ関連遺伝子群に含まれている。
図3.エピレグリンの作用を阻害するとマウスの関節炎が軽減する
関節リウマチのマウスモデルであるF759マウスの後ろ足の関節に炎症アンプを活性化させるIL-6とIL-17を投与することにより、3週間以内に関節炎を誘導することができる。この実験系においてshRNAを用いてエピレグリン(Epiregulin)の抑制(赤矢印)もしくはエピレグリンに対する抗体によってエピレグリンの作用を阻害する(青矢印)と、マウスの関節炎の病状(関節炎臨床スコア)が顕著に改善される。
図4.エピレグリンは患者の血清中で高い値を示す
関節リウマチ、動脈硬化および多発性硬化症の患者の血清中エピレグリン(Epiregulin)は、健康な人(対照)と比較して有意に高い値を示す。
2013年03月04日(月) ダイナミックブレインネットワーク研究室〈北澤茂教授〉web更新しました。
40年来の論争に幕細胞内の清掃マシーン「オートファゴソーム」の生成場所を特定!~さまざまな病気を防ぐために細胞が持つ機能の理解が前進~
図1.オートファゴソーム形成の模式図
細胞の中に、膜で出来た袋を押しつぶしたような皿状の隔離膜というものが忽然と現れ(幾つもできる)、その皿の縁が伸びながら曲がってツボ状に。そのときに、掃除すべき壊れたオルガネラや古いタンパク質、病原体などが包み込まれる。最期にツボの口が閉じて、オートファゴソームが完成する。その後、消化酵素を内蔵する別のオルガネラ・リソソームが融合しオートリソソームとなり、消化酵素が流れ込んで閉じこめたものを分解。分解が終わるとオートリソソームは消えていく。オートファゴソームの形成は、5〜10分でおこる。
図1.オートファゴソームが実際に造られる様子
青がミトコンドリア、赤が小胞体、緑がオートファゴソーム。各オルガネラの目印タンパク質に蛍光タンパク質をつないだ遺伝子を細胞に組み込み、オルガネラが違う色の蛍光を発するようにし、3色を同時観察できるレーザー顕微鏡で動画撮影を行った(一番上の段)。このような3色同時動画撮影は技術的に極めて困難で、カメラを3台接続したレーザー顕微鏡を新たに作り、デジタル画像解析技術を駆使するなどの努力を重ねた末に遂に成功した。見やすくするために真ん中と下の段は、各々ミトコンドリアとオートファゴソーム、小胞体とオートファゴソームだけが見えるようにしている。網目状のミトコンドリアも小胞体もダイナミックに動いているが、両者が接触しているポイントでオートファゴソーム(点に見える)ができている様子が分かる。世界で初めて撮影された映像である。
2013年03月11日(月)〜12日(火)開催 おもろい研究! 君ならできる、ここでできる - 阪大生命機能:春の学校 - 真剣にサイエンティストを育てたい
予想をはるかに上回るご応募があり、心ならずも抽選によって参加者を決定いたしました。今回、残念ながらご参加いただけない方々にも、当研究科に興味持っていただいたこと、たいへん感謝しております。幸運にも参加される方には、下記にプログラムを更新しましたので、ご覧ください。
※(CiNet(脳情報通信融合研究センター)(締切3月5日です), QBiC (生命システム研究センター)(締め切りました)のスクールが生命機能「春の学校」の終了後、引き続き別途予定されています。)
※「春の学校」開催に際してvirtual生命機能研究科「春の学校」において議論が始まっています。
[参加教授]
柳田敏雄(生物物理学)、難波啓一(生物物理学)、米田悦啓(細胞生物学)、平岡 泰(分子生物学)、仲野 徹(分子生物学)、八木 健(神経科学/分子生物学)、近藤 滋(パターン形成学)、吉森 保(細胞生物学)、月田早智子(細胞生物学)、大澤五住(神経科学)、藤田一郎(神経科学)、山本亘彦(神経科学)、小倉明彦(神経生物学)、北澤 茂(神経科学)、井上康志(ナノ・バイオフォトニクス)
[日程]
3月11日(月) みのお山荘 風の杜
12:30〜 | 受付 |
13:00~15:00 | 第1部 おもろい研究! ここならできる! ホームページ上で討論されたテーマを取り上げ話題提供をし、教授スタッフ、大学院生、学生の全体で討論します。 |
休憩 | |
15:30~17:30 | 第2部 おもろい研究! 明日はどっちだ! ホームページ上で討論された専門性のあるテーマを取り上げ話題提供をし、教授スタッフ、大学院生、学生の全体で討論します。 |
18:00~19:30 | 夕食 (旬の食材を使って心を込めた手作りコース料理) |
19:30〜 | 第3部 おもろい研究! 君ならできる 教授スタッフとグループをつくって、大学院生、学生とで話し合い、交流を行います。(軽食と飲み物を準備します) |
就寝 |
3月12日(火) みのお山荘 風の杜
7:30~9:00 | 朝食 (旬の食材を使った料理バイキング) | |
9:30〜 | 大阪大学大学院生命機能研究科まで移動 |
生命機能研究科
10:00~11:20 | 第4部 各研究室でのラボツアー 希望する研究室一つについてご案内し、研究内容を説明します。研究室によってはセミナーや実験等に参加することもあります。 |
11:30~12:30 | 第5部 入試説明会、リーディング大学院説明会 生命機能研究科の大学院について説明します。また、本年度から採択されたリーディング大学院(奨励金給付制度有)の説明します。 |
12:30 | 閉校 午後は自由行動(興味のある研究室見学など) |
QBiCもしくはCiNetのスプリングスクールへの登録者は、そちらのプログラムにご参加ください。 |
[問い合せ先]
-
生命機能研究科企画室
-
みのお山荘 風の杜
住所:〒562-0001 大阪府箕面市箕面2-14-71
電話:072-722-2191(受付は朝8時30分~夜9時)
URL:http://www.minoo-kazenomori.com/
第86回生命機能研究科研究交流会 2013年 3月15日(金) 16時30分~18時00分特別講演:小早川令子 研究室長(大阪バイオサイエンス研究所神経機能学部門)
2013年03月21日(木)開催 村上富士夫教授最終講義「脳研究40年」
日 時: 平成25年 3月21日(木)
15時00分~16時00分
場 所: 銀杏会館3階、阪急・三和ホール
題 目:「脳研究40年」
2013年03月22日(金)開催 近藤寿人教授最終講義「新しい発生生物学と私の時代」
日 時: 平成25年 3月22日(金)
15時00分~16時30分
場 所: 大学院生命機能研究科
ナノバイオロジー棟3階セミナー室
題 目:「新しい発生生物学と私の時代」
2013年02月27日(水)掲載 [最新研究成果]炎症誘導機構【炎症アンプ】は様々な病気に関連していた! - メタボリック症候群など慢性炎症性疾患の新規治療法開発へ -(免疫発生学研究室〈村上正晃准教授〉)
2013年03月04日(月)掲載 [最新研究成果]40年来の論争に幕/細胞内の清掃マシーン「オートファゴソーム」の生成場所を特定!さまざまな病気を防ぐために細胞が持つ機能の理解が前進(細胞内膜動態研究室)
おもろい研究! 君ならできる、ここでできる - 阪大生命機能:春の学校 - (ラボツアー)
生命機能研究科の春の学校では、希望する研究室一つについてご案内し、研究内容を説明します。研究室によってはセミナーや実験等に参加することもあります。
研究室 | 内容 |
ナノ・バイオフォトニクス研究室 (井上康志教授) |
光でナノの世界を観る |
染色体機能制御研究室 (石井浩二郎准教授) |
生物ゲノムが複数の染色体で構成されるのはなぜだろう |
視覚神経科学研究室 (大澤五住教授) |
10:00〜10:30 大澤との面談のみ(実際のラボツアーはできません) |
神経可塑性生理学研究室 (小倉明彦教授) |
記憶のしくみ |
ミトコンドリア研究室 (岡本浩二准教授) |
生きた細胞の中のミトコンドリアを捉える! |
ダイナミックブレインネットワーク研究室 (北澤茂教授) |
ダイナミックブレインネットワーク研究室でできること |
パターン形成研究室 (近藤滋教授) |
形(模様)と数学について考える
|
分子生体情報学研究室 (月田早智子教授) |
上皮細胞がシートになるとき |
病因解析学研究室 (仲野徹教授) |
生殖細胞にふれてみる 卵細胞への mRNAマイクロインジェクション、精巣からの精子採取、を見学し、実際に行ってもらう。 |
プロトニックナノマシン研究室 (難波啓一教授) |
|
発生遺伝学研究室 (濱田博司教授) |
動物の体の非対称性のOriginをつかまえよ!
|
細胞核ダイナミクス研究室 (平岡泰教授) |
生細胞でタンパク質の動きを見る |
心生物学研究室 (八木健教授) |
10:00-10:30 心生物学について (八木健) 10:30-10:50 実験と観察
11:05-11:20 心をもたらす局所回路について (木津川尚史) |
細胞分子神経生物学研究室 (山本亘彦教授) |
細胞分子神経生物学研究室のラボツアーです |
細胞内膜動態研究室 (吉森保教授) |
吉森研究室オートファジーツアー オートファジー(自食作用)は、真核細胞で広く保存された細胞内大規模分解システムである。細胞内でオートファジーが誘導されると、自身の細胞質の一部を取り込むように二重膜小胞(オートファゴソーム)が形成され、それがリソソームと融合することで大規模分解が起こる。オートファジーは、細胞がアミノ酸枯渇などの飢餓状態に陥った時に、顕著に誘導される。細胞はオートファジーにより自己の細胞質成分を分解し、分解産物を新たな分子合成に再利用していると考えられている。近年、オートファジーは病原体の除去、発がん・神経変性疾患・心不全の抑制など多岐に亘る生理機能を持つことが判明し、大きな注目を集めている。オートファジー研究は、日本が世界をリードしている研究分野であり、その一翼を担う当研究室においては、最先端の発見を得るべく日々研究が行われている。 |
2013年03月26日(火) "Neural correlates of contextual modulation in visual motion perception"Dr. Hiromasa Takemura (Department of Psychology, Stanford University, USA)
"Neural correlates of contextual modulation in visual motion perception"
「運動知覚のコンテクスト効果」
Dr. Hiromasa Takemura(竹村浩昌)
Department of Psychology, Stanford University, USA
日時:2013年3月26日(火) 15:00~17:00
場所:CiNet棟1階 大会議室(A)
## Map and directions: http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/eng/general/suita.php (CiNet Building is right next to the Nanobiology Building [Blue Circle #2] in the map)
Abstract:
A physically stationary stimulus appears to move in the direction opposite to surrounding motion (induced motion; Duncker 1929). We examined the neural correlates of induced motion by using fMRI for humans. During the fMRI experiment, we presented visual stimuli, which were composed of a central Gabor patch surrounded by an annulus filled with a translating random-dot pattern (inducer) and examined how the activation changes depending on the perception of central stimuli. We found that human MT complex (hMT+) exhibited the pattern of activation, which was closely matched to the perception of induced motion. The compatibility with induced motion was most pronounced in hMT+, as compared with early visual areas. The present results suggest that the hMT+ may be a neural correlate of induced motion perception and play an important role in contrasting motion signals in relation to their surrounding context and adaptively modulating our motion perception depending on the spatial context. At the end, I would like to briefly describe the preliminary findings in my ongoing project at Stanford, which examines the white matter pathway in the human visual cortex by using diffusion-weighted imaging.
Dr. Hiromasa Takemura (竹村浩昌) received his Ph,D. from Tokyo University under Prof. Ikuya Murakami. He is currently working with Prof. Brian Wandell at Stanford University.
主催:脳情報通信融合研究センター(CiNet)
共催:生命機能研究科、視覚科学フォーラム、基礎工学部生物工学
世話人:大澤五住
2013年03月22日(金) ダイナミックブレインネットワーク研究室〈北澤茂教授〉web更新しました。
「羊水の水流 体の左右決める作用判明」濱田博司教授らの研究成果が読売新聞で紹介されました。
読売新聞朝刊(2013年3月25日)より