日時
2019年3月22日(金)16:00〜17:00
場所
吹田キャンパス 生命機能研究科 ナノバイオロジー棟3階 セミナー室
演者
市川雄一((公財)がん研究会・がん研究所・がん生物部)
演題
セントロメア特異的なヌクレオソームに含まれるコアヒストンが8量体を形成する意義
要旨
真核生物のゲノムDNAはクロマチンとして細胞核内に収納されている。クロマチンを構成する基本単位はヌクレオソームと呼ばれ、H2A、H2B、H3、H4の各ヒストンタンパク質を2分子ずつ含むヒストン8量体に、DNAが巻きついた構造をしている。ところが、セントロメア領域においてはヒストン8量体を含む通常型のヌクレオソーム(octasome)だけでなく、各ヒストンを1分子ずつしか含まない特殊なヌクレオソーム(hemisome)の存在が示唆されており、どちらのヌクレオソーム構造がセントロメアの機能において重要なのかという点が論争の的であった。この点を明らかにするためには、上記の異なる会合状態を細胞内でコントロールする必要がある。我々は、ヒストン8量体の中心に位置するH3 homodimerに着目し、H3の相互作用部位に変異を導入することで、heterodimerを優先的に形成する改変型H3(H3X, H3Y)の作製に成功していた。そこで、出芽酵母のセントロメア特異的なH3バリアントであるCse4にこのシステムを応用し、改変型Cse4(Cse4X, Cse4Y)を作製することで、細胞内でoctasome(Cse4X/Cse4Y heterodimerを含む)とhemisome(Cse4XまたはCse4Yの片方のみを含む)をコントロールする系を構築した。解析の結果、セントロメアが正常に機能するためには、Cse4を2分子含むoctasomeが必須であることが示された。一方で、Cse4X/Cse4Y heterodimerを用いてドメイン解析を行った結果、キネトコアタンパク質との相互作用に重要なCse4のN末端またはC末端領域は、octasome中に1箇所存在すれば十分に機能することが明らかになった。これらの知見に基づき、セントロメアの機能におけるヒストン8量体形成の意義について考察を行う。
参考文献
- Ichikawa et al. eLife, 6: e28836 (2017)
- Ichikawa et al. eLife, 7: e37911 (2018)
世話人
深川竜郎
Tel: 06-6879-4428
E-mail: tfukagawa@fbs.osaka-u.ac.jp
セミナー前後に市川博士と個別に面談したい方は、深川までご連絡ください。
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/seminar/seminar/docs/fbs-seminar-fukagawa-20190322.pdf