日時
2018年5月17日(水)15:00〜16:00
場所
吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
演者
立花誠(徳島大学先端酵素学研究所エピゲノム動態学)
演題
H3K9メチル化エピゲノムの動的変動がほ乳類の発生・分化を制御する
要旨
高等真核生物の遺伝子発現には、転写因子の機能のみならず、鋳型となるゲノムの後天的な修飾であるエピゲノムが大きく関与している。ヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化は、セントロメアやテロメアのように遺伝子発現が半永久的に抑制されたクロマチンを代表するエピジェネティックマークとして知られており、それを触媒する酵素は分裂酵母からヒトまで高度に保存されている。一方で、哺乳類にはそれ以外の酵素、すなわちセントロメアやテロメア以外の染色体部位を標的とするH3K9メチル化酵素や脱メチル化酵素が多数存在することが分かってきた。私たちはこれまで、ほ乳類のライフサイクルにおけるH3K9 メチル化エピゲノムの変動とその意義を明らかにする研究を進めてきた。その結果、H3K9 メチル化エピゲノムは当初予想されたような恒久的に維持されるものではなく、むしろ個体発生や細胞分化の過程で極めてダイナミックに変動し、遺伝子発現の時間・空間的な制御に積極的に関与していることを明らかにした。メチル化酵素と脱メチル化酵素の拮抗した作用によるH3K9メチル化エピゲノムのダイナミックな変動がどのような生命機能に関わっているのかについて、最新の知見を交えて紹介したい。
参考文献
- H3K9 methyltransferase G9a and the related molecule GLP
Shinkai and Tachibana Genes Dev.25: p781, 2011 - Epigenetic regulation of mouse sex determination by the histone demethylase Jmjd1a
Kuroki et al. Science341: p1106, 2013 - Rescuing the aberrant sex development of H3K9 demethylase Jmjd1a-deficeint mice
by modulating H3K9 methylation balance.
Kuroki et al. PLoS Genet.13: e1007034, 2017 - Combined loss of Jmjd1a and Jmjd1b reveals critical roles for H3K9 demethylation
in the maintenance of embryonic stem cells and early embryogenesis.
Kuroki et al. Stem Cell Rep.10: p1340, 2018
世話人
深川竜郎
Tel: 06-6879-4428
E-mail: tfukagawa@fbs.osaka-u.ac.jp
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/seminar/seminar/docs/fbs-seminar-fukagawa-20180517.pdf