日時
2018年1月31日(水)14:00〜15:00
場所
吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
演者
八木田和弘(京都府立医科大学大学院医学研究科)
演題
概日時間秩序と生命機能
要旨
「概日時計」は、地球の自転周期に伴う環境変化への適応を担っている。概日時計は、バクテリアから哺乳類および高等植物に至る、ほとんどの生物が普遍的に有している生命機能であり、朝や夜が来るのを予測することで先んじて生体機能を変化させる。来たるべき外界の自然環境変化に内部環境を能動的に適応させる概日時計。遍く生物種が有し、際立った特性をもつ生命システムは生物学的にも医学的にも想像以上の広がりを持つテーマとなってきている。事実、環境周期との不適合は様々な疾患リスクと関連することはが指摘されており、現代社会が抱える喫緊の課題となっている。
哺乳類の概日リズムの中枢は視床下部にある視交叉上核(SCN)であるが、我々はこれまでに、線維芽細胞などの培養細胞でも視交叉上核と同様の概日時計が備わっていることを示し、個々の細胞レベルでの概日時計制御系が果たす役割について検討を進めてきた。その結果、多能性幹細胞であるES細胞などを用い「概日時計は細胞分化と密接に関連する」という新たな事象を発見した。さらに最近、ES細胞の系で見出した分子機構が、マウス個体発生においても共通して機能することを突き止め、これまであまり知られていなかった哺乳類における概日時計成立過程の理解を推し進めた。
本セミナーでは、これまで我々が進めてきた概日時計成立機構の解明に向けた研究を概説するとともに、環境周期との関係性から概日時計の意義を改めて問い直す新たな取り組みを紹介する。さらに、単なる時間生物学的存在を超える、意外な波及効果を生む概日時計の捉え方についても議論したい。
世話人
近藤滋
Tel: 06-6879-7975
E-mail: skondo@fbs.osaka-u.ac.jp
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/seminar/seminar/docs/fbs-seminar-skondo-20180131.pdf