めざせ!『おもろい』生命機能研究
大阪大学 大学院生命機能研究科 研究科長
科学は、その歴史が示すように、哲学にはじまって、博物学的な研究から多くの分野へとわかれてきました。意図的というよりは自然に細分化してきたものであって、生命科学もその一分野にすぎません。しかし、生命というものは、わたしたちの存在そのものであり、とりわけ重要な一分野です。
わたしたちの研究科は、生命機能という名がしめすとおり、『生命のはたらき』をさぐることを目的にした研究科です。それぞれの研究者が、さまざまな生物を対象に、分子から細胞、臓器そして個体にいたるまで、さまざまなスケールにおける生命現象を解析しています。
そのためには、生物学や医学だけではなく、化学、さらには物理学や数学、電子工学や通信工学にいたるまで、非常に多岐にわたる方法論が必要です。わたしたちの研究科は、それらの分野を融合することにより、あたらしい視点から、生命というものをもっと詳しく知りたい、誰もがなしえなかったような高いレベルで生物のはたらきを知りたい、という目的で平成14年に設立されました。
『融合』といっても、ほんとうにそんなことができるのか、と思われるかもしれません。分野がわかれていったのは必然でしたが、こんどは意図的に、生命を知るという目的のため、いわば強引に融合させようというのですから、たしかに容易なことではありません。しかし、いろいろなことがわかりつつある今だからこそ可能になってきたともいえるのです。
けっして大きな研究科ではありませんので、研究科のメンバーだけですべてのことをまかなうことはできません。幸いなことに、情報通信研究機構などとの協力で発足した脳情報通信融合研究センター(CiNet)や理化学研究所の生命システム研究センター(QBiC)が近在していますので、それらのセンターなどと密接な関係をとりながら、幅広い意味での新しい生命科学研究をおこなっています。
いきなり融合といっても難しすぎるかもしれません。しかし、わたしたちの研究科は『おもろい研究』こそが大事であると考えています。たとえば、ちょっと違った分野の研究をおもしろがることから始めてみてはどうでしょう?そうすると、どの分野の人であっても、生命科学を楽しむことができるはずです。そして、そのおもしろさがどんどん広がっていくはずです。生命に興味をもって『おもろい研究』をめざす人がひとりでもたくさんあつまってくれる場所。わたしたちは、そういう研究科をめざしています。