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Channel: 大阪大学大学院生命機能研究科
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2018年7月20日(金)16:20〜 マーモセット前頭皮質からの投射マッピングプロジェクト

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日時

2018年7月20日(金)16:20〜

場所

吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室

演者

渡我部昭哉(理化学研究所 脳神経科学研究センター)

演題

マーモセット前頭皮質からの投射マッピングプロジェクト

要旨

前頭前皮質(Prefronal cortex: PFC)は、霊長類、特にヒトで著しく拡大した高次脳中枢であり、自閉症や、統合失調症などの精神疾患の原因部位だと考えられている。霊長類のPFCには、ネズミと相同性の高い領野の他に、ネズミには見られない顆粒性PFCのような細胞構築を示す領域が存在しており、進化的な意味でも、臨床的な意味でも興味深い脳領域である。PFCの機能を総合的に理解するためには、その神経結合は重要な手がかりになる。近年マウスでは、システマチックにトレーサーを注入し、神経結合の全体像、いわゆる「コネクトーム」を明らかにしようという動きがある。この動きは、古典的な解剖学を単にスケールアップしたというだけでなく、脳全体をシステムとして定量的に理解しようという新しいアプローチだと私は考えている。我々は、同様のアプローチは、霊長類においても有効だと考え、南米原産の小型のサルであるコモンマーモセットを用いたPFC投射マッピングプロジェクトを2014年に開始した。マーモセットは、300-500gと小柄で、脳もしわがないシンプルなものでありながら、顆粒性PFCを含め、マカク、ヒトとよく似た皮質構造を有しているため、「ネズミ」と「ヒト」をつなぐ重要な霊長類モデルになるだろうと期待した。

手法としては、TET増幅系を組み込んだAAVベースの順行性トレーサーをマーモセット一頭あたり、1箇所に注入し、二光子連続トモグラフィー法(STPT)を使った、高感度、高精細3Dイメージングを試みている。各脳は、STPT前に、ex vivo MRIで撮像し、参照用の3Dテンプレートにレジストレートすることで、解剖アノテーション、定量、データ統合を行う。AAVトレーサーは、シナプス結合部位だけでなく投射経路の軸索も標識するので、拡散強調画像による投射解析との比較も視野に入れている。今回のトークでは、背外側PFCへの注入例を中心に、本プロジェクトで得られつつあるデータを紹介し、マウスデータとの比較から見えてきた霊長類脳の特徴についてお話ししたい。

世話人

木津川尚史
Tel: 06-6879-7991
E-mail: kit@fbs.osaka-u.ac.jp


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