日時
2017年10月31日(火)16:00〜17:00
場所
吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
演者
成田哲博(名古屋大学理学研究科構造生物学研究センター)
演題
アクチン線維の動態を構造から理解する
要旨
アクチンは細胞の中で最も多く存在する蛋白質の1つで、重合することにより線維を形成する。アクチンはATPを結合した状態で重合し、線維内でATPを加水分解し、ADP結合状態になると線維が不安定になり脱重合する。線維両端の重合速度は異なり、重合速度が速いほうはATP結合状態を保ち重合端となり、遅いほうはADP結合状態となり、脱重合端となる。この動態は、線維を脱重合、切断するコフィリンによって加速され、多くのアクチン機能の基盤となっている。私達はいままで、アクチン線維構造をX線線維回折法で解明し、アクチン線維両端の重合速度の違いの由来をクライオ電子顕微鏡によって明らかにしたが、最近クライオ電子顕微鏡により、アクチン-コフィリン複合体の3.8Å分解能構造解析を行い、コフィリンによるアクチン線維の切断、脱重合機構を説明するモデルを構築することができた。また、最近解いたフラグミンとアクチンとの共結晶の中では、驚くべきことにアクチンの構造が単量体ではなく線維状態とほぼ同じであり、これを用いて、ADP状態のアクチン線維がなぜ不安定であるのか、アクチンは線維状態になるとなぜATPを加水分解するのかを解明した。本セミナーではこれら明らかになってきたアクチン動態モデルを紹介し、クライオ電子顕微鏡を用いて4-5Å分解能で明らかにした原核生物のアクチンホモログであるParM線維の構造多様性にも触れたい。
世話人
深川竜郎
Tel: 06-6879-4428
E-mail: tfukagawa@fbs.osaka-u.ac.jp
セミナー後に成田博士と個別に面談したい方は、深川までご連絡ください。
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/seminar/seminar/docs/fbs-seminar-fukagawa-20171031.pdf