日時
2017年7月6日(木)16:00〜
場所
吹田キャンパス 生命機能研究科 生命システム棟2階 セミナー室
演者
水関健司(大阪市立大学・大学院医学研究科・神経生理学)
演題
海馬の神経回路における情報処理機構
要旨
これらの成果は、記憶エングラムを人為的に操作することで、記憶同士の関連づけを自在に操作できることを示すと共に、知識や概念の形成の理解への第一歩となると期待されます。
エピソード記憶に重要な海馬・嗅内皮質は、一般的には興奮性フィードフォワードの神経回路であると考えられている。この回路内で情報がどのように処理されるかを調べるため、多点記録法を用いて、場所課題中のラットの海馬と嗅内皮質の様々な領域から100個程度の神経細胞を同時記録した。その結果、探索行動時のシータオシレーション中には、各領域の神経細胞の発火のタイミングは、上流領域からの入力ではなく領域内の局所回路によって制御されており、各領域が情報処理の独立性を確保していることが示唆された。
局所回路の情報処理を理解するには、どのような細胞が局所回路を構成しているかを知ることが重要である。海馬CA1錐体細胞は均一な細胞集団とみなされてきた。しかし私達は、浅層と深層のCA1錐体細胞は、発火やバーストの頻度、発火の起こるシータ波やガンマ波の位相などが異なり、それぞれが特有の情報回路を形成していることを見出した。
さらに、海馬と嗅内皮質の発火頻度・同期性・スパイク伝達効率などは対数正規分布に従うことを見出した。1日の範囲内では脳状態、環境、課題の種類、課題の新奇性などにかかわらず、個々の神経細胞の発火率は比較的固定されていた。これらの結果は、記憶が脳内でどのように割り当てられるのかという問いに対してのヒントになると考えられる。
海馬の経路特異的な情報処理機構を明らかにするために、光遺伝学と大規模記録を組み合わせて現在行っている研究に関しても紹介したい。
世話人
八木健
Tel: 06-6879-7991
E-mail: yagi@fbs.osaka-u.ac.jp
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/seminar/seminar/docs/fbs-seminar-yagi-20170706.pdf